当記事は2023年11月日時点の情報です
実業団チーム「 ホダカファクトリーレーシング」や、コーダーブルームがサポートする強豪トライアスリートの 渡邊優介選手にも供給されているアルミレーシングバイク「STRAUSS DISC」。
今回は日本一STRAUSS DISCを使い倒しているといっても過言ではない、ホダカファクトリーレーシング所属 蠣崎選手にインプレッションしてもらいました! 蠣崎選手は直営ショップのKhodaaBloomショップ東越谷店のスタッフであり、メカニックの視点でもSTRAUSS DISCを解説します。
■突出した特徴は高次元のバランスに
STRAUSS DISCは、販売当時アルミロードバイク完成車世界最軽量を誇った超軽量高剛性の「FARNA SL」と軽量と快適性の高次元でのバランスを追求した「FARNA SL²」をベースに、現在の一般化したディスクブレーキを搭載したオールラウンドモデルだ。
私が乗るのは430mmサイズ。
取り回しの良さと、剛性感を求めて430mmサイズをチョイスしたが、465mmサイズでもポジションを出すことは充分に可能だった。個人的に長いステムの方がフィーリングが良く、なにより見た目もかっこいい。ということもあってやはり小さいサイズは欠かせなかった。
リーチ80mmのアルミ丸ハンドル(約250g)と120mmのアルミステム(約120g)を取り付け、インプレッション時のホイールは「MAVIC KSYRIUM Elite UST DISC」を使用した。
※ライダー体型:身長164cm / 股下78cm / サドル高:675mm
この状態でバイク重量は約8.2kg。アルミバイクとしては妥当なところだろう。
軽量パーツをふんだんに使用したコーダーブルームショップ稲城店の野中店長のバイクが500mmサイズで7.8kgほどなので、軽量化の余地は充分にあるといえる。
■ファーストインプレッション
STRAUSS DISCに乗って感じた感覚は2つ。
「角が立っていないマイルドな乗り味」
「とにかくまっすぐ安定して走る」
走行性能は高いが快適性が低い、といったようなとがった性格が多いこのアルミレーシングバイクというジャンルにおいては、かなり大人しい性格で優等生といった印象だ。
乗る中で思い出したのは『FARNA SL²』だ。ファーストインプレッションはまさにこれだった。徹底的なバランスの追求で、とにかく乗りやすかったあのバイクに瓜二つなのだ。ともするとレーシングバイクとしては面白みに欠けるかもしれない。しかし、このバランスの良さは「初、中級者におすすめの」自転車という乗り物において、重要な性能だ。
話は逸れるが、私の考えるレース初、中級者におすすめするフレームの基準がある。
- 「パワーロスが少なく入力した力の分だけ前へ進むこと」
- 「しっかりまっすぐ走ること」
- 「狙ったラインで思った通りに安定してコーナリングできること」
- 「上りも下りも平坦もスプリントもできること」
- 「決して硬すぎず、かといって柔らかすぎないこと」
- 「余計な味付けはされていないプレーンな乗り味であること」
このようなフレームこそベストチョイスという考えを持っている。
そしてアルミバイクには尖った性格が多いことは前述のとおりである。その中でSTRAUSS DISCは優等生的なバランスの良さを予感させるファーストインプレッションだった。
また、前三角からは芯のしっかりある剛性感を感じることができ、後三角は路面からの衝撃をうまく吸収してくれる。シチュエーションを選ばずにそつなく安心して走ることができる、そんな良さを感じさせてくれた。
続いて登りで試してみた。
登坂では約8kgという重さを感じるものの、ダンシング時のバイクの振れ方やフレームのしなり方は絶妙なバランスを感じ、そのまま下りに入ってみても違和感や癖を感じることはない。コーナー入口でのハードブレーキングをしてみても、嫌なたわみ方は一切しない。コーナリングを開始して若干のアンダーステア(外へ出ようとする動き)気味ではあったものの、ほぼ思ったライン通りに曲がることもできた。
ここまでは高次元の出来栄えといえる。
■アルミバイクとして期待される「硬さ」
レーシングバイクとして必要な要素。高出力をかけた時の「かかり」はどうだろうか。FARNA SL²は個人的に柔らかい印象があったため、それに近いのかなと思いながら下ハンを握って軽くもがいてみた。
「いやいや、硬いじゃん!」
良い意味で期待を裏切られてしまった。入力したパワーはしっかりと動力として車輪を回し、気持ち良い加速を見せてくれて思わずニヤリとしてしまう。
BB回りやチェーンステーのボリューム感からは予想できないしっかりした剛性感。
これは前後12mmスルーアクスルになったことによる剛性アップの恩恵も多分にあるとは思うが、そこまで含めてSTRAUSS DISCというフレーム。しっかりとバランスが取られており、完成度の高さを感じることができる。
続けて最大出力でスプリントしてみる。さすがに最大パワー1200w※をかけるとリア三角の剛性不足を感じてしまった。
だが、そもそも初~中級者でそこまでのパワーを出せる人はどれくらいいるのだろうか。それよりも、そこまでの高出力に応えることができるフレームを乗りこなせるのか、と言われれば、おそらく無理だろう。要するにSTRAUSS DISCの剛性バランスは初~中級者にとって「ちょうどいい」のだ。
※1200w…1200ワット。単位時間当たりにどれだけのエネルギーが使われているかをあらわす。この場合の単位時間は1秒間。人力で動かす自転車では進ませるためのエネルギー(パワー)が競技者としてひとつの基準となる。世界最高峰のツール・ド・フランスであってもレース中の平均ワット数は400~450wほどといわれる。
■STRAUSS DISCはインプレ泣かせの優等生
ここまで幾度となく「バランス」の言葉を使ってきた。
そうであるように、STRAUSS DISCについて「このフレームの特徴はなにか?」と聞かれると答えることが難しい。あえて言うならば、「特徴がないことが特徴」であり、言い換えれば「バランスが良い」という言葉に尽きると思う。
しかし、バランスの良さのおかげで「味付け」をすることができる。
- 軽量なホイールを使えば、登りをより軽快にこなし、さらに加速感も向上する。
- エアロなホイールを使えば、高速域での巡行性能が向上し、トップスピードが伸びる。
- 剛性の高いホイールを使えば高出力を加えた時の反応、いわゆる「かかり」がよくなる。
一見するとあたり前なことを言っているように聞こえるかもしれないが、ヒルクライムバイクやエアロバイク、エンデュランスバイクなどの用途を絞ったフレームだと、なかなかそうはいかない。フレームの主張が激しいことで、ホイールの良さを相殺しかねないのだ。
個人的にはこのバランスの良いどこを走ってもそつなくこなすSTRAUSS DISCには、同じくどこで使ってもそつなくこなせるミドルハイトのホイールが合うだろう。ホダカファクトリーレーシングでは「MAVIC COSMIS SLR45」の使用率が高い。ロードレースに求められる巡行性能を最重視し、スプリントなどの剛性を求められる場面に対応することも重視している。
■メカニック視点のSTRAUSS DISC
ここからはメカニックとしての目線で見ていこう。
STRAUSS DISCはタイヤクリアランスが大きいことも、オールラウンドバイクといえる所以のひとつだ。STRAUSS DISC 105に標準装備しているタイヤ「MAXXIS HIGH ROAD」の28Cは、一見すると28Cオーバーの太めのタイヤに見えるほどだが、これがかなり相性が良い。
アルミレーシングバイクとしては振動吸収性が高いこのフレームに28Cタイヤを組み合わせることで、まるでエンデュランスバイクに乗っているかのような乗り心地の良さを発揮し、さらなる快適性の向上を図ることができている。
既にSTRAUSS DISCに乗っていただいているユーザー様にも是非やってみていただきたい組み合わせだ。なお、これを組んでもクリアランスにまだ余裕がある。おそらく30Cであれば装着は容易だろう。
また、ケーブルルーティングにも開発のこだわりが感じられる。STRAUSS DISCはシフトケーブルとリアブレーキホースをダウンチューブ内に内装するインターナルケーブルルーティーングを採用している。これにより空気抵抗の削減とデザイン性の向上が図られている。
さらにシフトケーブルはアウター受けを廃してフルアウターにすることで、インナーケーブル交換時のメンテナンス性向上を狙っている。フルアウター化による恩恵はかなり大きく、インナーケーブル交換時の作業を簡略化し効率的に行うことができるため、整備時間の短縮が可能だ。
加えてSTRAUSS DISC ULTEGRAに標準装備となっている「VISION TriMAX 30」はチューブレスレディ対応ホイール。今やロードバイクタイヤのスタンダードになりつつあるチューブレスへのアップグレードも可能となっている。
■STRAUSS DISCはKhodaaBloomのスタンスを体現している
ロードバイクの楽しみ方は人それぞれだ。長い距離も走ってみたいし、ゆくゆくはレースにも挑戦してみたい。さらには自分でセルフメンテナンスにも挑戦してみたい、なんて人もいるだろう。
KhodaaBloomは「スポーツバイクの裾野を広げていきたい」と事あるごとに表明している。新たに始める人がいなければそのコンテンツは衰退してしまう。自ブランドの枠を超えて、スポーツバイクを楽しむすべての人を盛り上げていくスタンスがKhodaaBloomにはある。
STRAUSS DISCもそのスタンスを本質に携えたバイクと言えるだろう。初~中級者に向けた、「深い懐を持ったバランスの良い一台」。それがSTRAUSS DISCだ。
■製品概要 & 試乗車情報
- 商品名 / 希望小売価格
- STRAUSS DISC ULTEGRA / 363,000円(税込)
- STRAUSS DISC 105 / 264,000円(税込)
- STRAUSS DISC TOKYO / 218,900円(税込)
- 製品情報ページ
- STRAUSS DISC ULTEGRA
- STRAUSS DISC 105
- STRAUSS DISC TOKYO
■ライダープロフィール
- 蠣崎 藍道(かきざき らんどう)
- KhodaaBloomショップ東越谷店スタッフ / スポーツバイクスペシャリスト
- 保有資格:
- 日本スポーツ協会認定スポーツ指導員自転車競技専門コーチ
- 日本サイクリングガイド協会公認サイクリングガイド
- 自転車産業振興協会認定メカニック(SBM認定メカニック)
- 自転車協会認定SBAA PLUSメカニック
- MAVIC JAPAN認定MAVICマイスター
- 自転車歴:12年
- 所有バイク:
- FARNA PRO AERO DISC / RAIL 700
- 略歴:
- 2013~2015年 ロードレースチームエカーズ(EQADS)所属
- 2014~2018年 順天堂大学自転車競技部所属
- 2018~2019年 都内有名プロショップにて店長兼メカニックを経験
- 2019年 INTERPRO CYCLING ACADEMYメカニックとしてツアー・オブ・ジャパンに帯同
- 2019年~ NPO法人カケルバイクの運営に従事
- 2020年~ 大磯クリテリウム初心者向けセミナー講師を担当
- 2021年 コーダーブルームショップ東越谷店勤務 / ホダカファクトリーレーシング所属
- 2021年 LEOMOベルマーレレーシングチームメカニックとしてツアー・オブ・ジャパンに帯同
- 2021年 TOKYO2020 スイス トライアスロンチーム メカニック帯同
- 2022年~ 大磯クリテリウム全レースの解説を担当