ニュース

シクロクロス最速店長のSTRAUSS PRO RACE2最速インプレッション

当記事は2023年7月26日時点の情報です

STRAUSS PRO RACE2 (7)_Black_バルブ横_サドル高

KhodaaBloomの新旗艦バイク「STRAUSS PRO RACE2」の最速インプレッションを行うのは、普段はKhodaaBloomショップ稲城店店長として働きつつ、自転車競技ではHODAKA FACTORY RACINGの代表として活動する野中秀樹選手です。

野中選手はロードレースではJBCF E1カテゴリ、シクロクロスではME1カテゴリで、それぞれのトップカテゴリでレースに参戦しています。2022年末に開催された「稲城クロス第2戦 アミノバイタル® シクロクロス最速店長選手権」では優勝を飾っています。 20221206134502 (第2回 アミノバイタル® シクロクロス最速店長選手権で優勝を飾り、2代目シクロクロス最速店長となった。)

では早速、野中選手によるSTRAUSS PRO RACE2のインプレッションをお届けします。

私が勤務するホダカ株式会社のKhodaaBloomから新たな旗艦モデル『STRAUSS PRO RACE2』が発表・発売された。 前フラッグシップモデルである「STRAUSS PRO DISC」で実現した高次元のバランスはそのままに、日本の峠にフォーカスした軽量レーシングバイクとして全く新しく生まれ変わっている。 この新モデルに発表直前から2週間ほど乗ることが出来た。 前モデル以前からKhodaaBloomのフラッグシップに乗ってきた経験を踏まえてインプレッションしていきたいと思う。

特筆すべき軽さ

まず試乗車を手にして感じたのはやはり軽さであった。試乗車にはMAVICの「KSYRIUM SL DISC」というアルミホイールが装着されていたが重量は7.4㎏(ペダルレス)と軽量に仕上がっていた。フレーム重量820gは伊達ではない。 試乗車のサイズは490㎜でリーチは383㎜、身体的特徴や乗り方によっても変わってくるが身長176㎝の私には一つ小さなサイズの感覚だ。
※490サイズ適応身長=165cm~175cm
STRAUSS PRO RACE2-image-019 (490㎜サイズにメインコンポーネントがデュラエース、試乗した際のホイールはKSYRIUM SL DISCとなっていた。)

まずは近場である「連光寺坂」や「尾根幹」を走った。どちらもKhodaaBloomショップ稲城店から至近のアップダウンを含む道だ。ライド中も一番に感じる性能はやはり軽量性だろう。信号からの立ち上がりで加速が速く気持ちがよい。
登り坂に入るとバイクの性格が前面に出てきて『山を競い、峠を楽しむ』というコンセプトが良く似合う事が分かる。ただただ登りが楽しい。 走るうちに軽量性だけの『軽さ』ではないことに気づいた。EPS製法で形成されたフレームとボリューム感のある左右非対称のBB、チェーンステイから生まれる剛性感はぐんぐんとバイクを上へ上へと進ませてくれた。
これが次項でも述べる軽量だけではない軽さの部分である。

卓越したバランス・扱いやすさ

フレーム重量820gは十分軽量だが、決して最も軽いわけではない。700g前後のフレームも存在する昨今、『STRAUSS PRO RACE2』は820gで卓越したバランスを確保している。 STRAUSS PRO RACE2 フレームセット (820gのフレームは重量だけではない『軽さ』を実現する)

軽量バイクはその軽さからバイクの振りが軽く、ダンシングの軽さが際立って良い印象がある場合が多いが『STRAUSS PRO RACE2』は予想に反してシッティングの感覚が非常に良かった。どっしりとサドルに座って高トルクをかけるレーシーなシチュエーションもよかったが、ロングライドの途中などに出てきた登坂で無駄な体力を使わないよう軽トルクでクルクルとペダルを回してパスするような場面でもこの良さを感じることが出来るだろう。
もちろん軽量バイクらしい性格はしっかりとあり和田峠でダンシングを使い大きな力をかけつつバイクを振るシーンではバイクの振りが軽く、BB、チェーンステイ周りはしっかりとした剛性感で推進力を生んでくれた。

写真① (次の登りが近づいてくることが楽しみになる)

試乗車はアルミのハンドル周りとクロモリレールのサドルが取り付けられていたのでダンシングの軽さはまだまだ良くできるポテンシャルの高さを感じた。

卓越したバランスが活きるのは登坂だけではない、登坂の後には必ず下りが待っている。ここでは『STRAUSS PRO RACE2』の扱いやすさを感じることが出来た。緩やかなワインディングが続く大垂水峠、Uターンに近いようなつづら折りが連続する和田峠、どちらの下りでも減速、コーナリング、加速に癖がなく荒れた路面でも乗り心地が良い。 レーシングモデルながら扱いやすく、非常に乗り心地が良いという特徴はKhodaaBloomが以前のモデルや現行アルミモデルの『STRAUSS DISC』で一貫してきたドロップデザイン(シートステーをトップチューブの交点から下へずらす形状)を採用しない事から来ていると思う。
ニュートラルな形状のフレームは誰でも乗った瞬間に扱いやすさを感じる事ができるだろう。ドロップデザインを採用しない事で長くなるシートステーは振動を吸収し安心感をもたらす。速度の出る下りやレースなどのシーンではこの安心感が精神的な余裕につながりパフォーマンスを最大限に引き出してくれる。

写真② (多少荒れた路面でも上質な乗り心地が提供される。ロングライドだけでなく高速走行時の安心感もここから生まれる)

ちなみにこのニュートラルな性格は組み付けるパーツを選ばないこともメリットで、ホイールを変えてMAVIC『COSMIC SLR 45 DISC』でも同じコースを走ったが、全くタイプの違うどちらのホイールでも良い部分を打ち消さない事が特徴的だった。

幅広いユーザビリティ

スペックを見ればわかる部分だがメカニックという立場からも簡単に言及しておこうと思う。稲城店に展示するため『STRAUSS PRO RACE2』を2台組み立てた。 『STRAUSS PRO RACE2』はフルインターナルに対応しながらも、セミ内装(フレームのみの内装)にも対応している。さらに付属部品の交換で機械式コンポーネントにも対応することで現存するディスクブレーキ用のロードバイクコンポーネントであれば全てに対応しているといえるだろう。

STRAUSS PRO RACE2_zoom (15) (ライダーがもつパーツを有効に活用できるよう、拡張性をもたせた仕様)

これにより理想だけでは語れないライダーの現実的な問題を解決し、多くの方の選択肢となるバイクとなっている。
専用化が進む中でこのユーザビリティの高さは嬉しいポイントだ。
UCI認証を取ったことでこれからの活躍を夢見る若者や、すでに格式の高いレースに参戦している本格レーサーのユーザーにも安心して使ってもらえるようになっている。

なぜ今軽さ? KhodaaBloomのアンサー

昨今のレーシングロードバイクの方向性はワット削減、いわゆる抵抗を少なくしていくことに傾倒してきている。フレームは全てのチューブ、ステーにいたるまでエアロ形状を採用し、シートポストやハンドルは専用、さらには無線式の電動コンポーネント専用のフレームなども数多く存在する。乗り手がバイクに合わせる時代が始まっているのだ。
スピードを競うロードバイクにおいてこの方向性は間違いではない。
しかしこれは日本国内においても正解なのか?
レースをするすべてのライダーにとっての正解なのか?
そういったアンチテーゼともとれる主張を『STRAUSS PRO RACE2』は発している。
日本では山がちな地形からライドに出れば多くの峠に差し掛かる。島国の特徴でもある急峻な登りでは自ずと速度が落ちてしまうだろう。また交通規制の難しさから国内のロードレースもこのような特徴を持った登りを含む周回コースが多い印象がある。
さらに細かなつづら折りを持つ峠も多い。ストレートが短いつづら折りの下りはやはり速度が出しづらいのだ。
このような環境でも本当にエアロが絶対性能なのだろうか。
自転車とは本来もっと自由で、人に寄りそう乗り物ではなかっただろうか。
しっかりとした性能の中に普遍的な価値と、この問いに対するKhodaaBloomの答えを見た気がする。

STRAUSS PRO RACE2_zoom (1) (『STRAUSS PRO RACE2』は大きな空気抵抗を持ちつつ、
走行感に影響の出ないブレーキホースをフルインターナルとすることで空力を追求している)